高市内閣が発足して、かつて自民党が制定しようとした「スパイ防止法」が再び注目されることとなりました。
自民党と日本維新の会の連立合意書でも検討することが盛り込まれていたのですが、1985年には強硬に反対されて実現できなかった法案です。
スパイ防止法とは何か、なぜ必要なのかを解説します。
スパイ防止法とは?
高市早苗氏が総理大臣に任命されたのですが、高市氏は自民党総裁選の公約の一つとして「スパイ防止法」の早期制定を掲げていたのです。
総理大臣に任命される前も、スパイ防止法の導入を検討することも含めた治安強化策の提言書を石破前総理に手渡していました。
連立合意書には、「スパイ防止法について25年に検討を開始し、速やかに法案を成立させる」と明記していました。
日本維新の会は高市総理の指名に賛成したものの連立ではなく閣外での協力者となっているのですが、スパイ防止法については元々推進することを考えているのです。
また、野党の中でも国民民主党をはじめとして賛成している勢力もあり、既に独自でスパイ防止法の原案も作成し、公表しています。
自民党ではまだ法案の内容を明確にしていないので、先に公表することで主導権を握りたいという考えもあるのでしょう。
一方、参政党もスパイ防止法の推進勢力であり、政策にも外国勢による日本への侵略的行為や機密情報の党首などを機動的に防ぐ仕組みを構築することを掲げています。
国会でも、衆院で定数465の半数を超える261がスパイ防止法に賛成しており、内訳は自民196、維新35、国民27、参政3です。
同様に定数248の参院でも160、内訳は自民101、維新19、国民25、参政15となっていて、衆参両院で過半数の賛同を得ています。
現状でも法案を提出すれば賛成多数で成立するように思えるかもしれませんが、実際にはそう簡単に進まないのです。
1985年にも同じような趣旨の法案が出されたことはあるのですが、反対意見が強く成立しなかったという経緯があります。
かつて自民党で出された法案は国家秘密についてスパイ行為をされないための法律で、スパイ防止法の他に国家秘密法とも呼ばれたのです。
研究が続けられていた法案ですが動きが加速したのは1984年のことで、岸信介元首相が中心となって法律制定への旗振りを始めました。
スパイ防止法案は賛成する自民党内の保守派や政治団体からの後押しもあり、1985年に国会提出されたのです。
しかし、内容について知られるようになると強く懸念する声も聞こえるようになり、特に法案の第6条に明示されたスパイの定義が議論の焦点となりました。
スパイについて、国家秘密を探知や収集したのが外国に知らせるためという場合と明示されており、外国の政府などが知りうる状態になることと定義されていたのです。
そのつもりがなかったとしても外国に知られてしまうことがあれば、本来問題がない内容の言論も通報されてしまうかもしれないと解釈されました。
日本国内での評論、報道、研究発表、演説などはすべて知ることができるため、各界では様々な反対意見が出されたのです。
また、法案では不当に国家機密を探知・収集して外国に伝わる状態にしたものに対しては、無期または3年以上の懲役とされました。
さらに、日本を著しく危険にさらすようなことがあった場合は死刑または無期懲役を科すとしていたのです。
しかし、法律に違反するということではなく、明確に決まっていない方法に対して処罰を科すという内容となるため、曖昧過ぎると強く反対されることになりました。
法案は結局、野党の強い反対や自民党内の慎重派などの動きにより、審議されるまでもなく取り下げられてしまったのです。
中身を修正して再度提出したものの、党内でも反対意見が増えてしまいスパイ防止法制定に向けた機運は沈静化することとなりました。
特に強く反対していた日本弁護士連合会では、1987年に出された修正法案に関しても、反対する立場を続けたのです。
内容について明記されていない点が多すぎることを強調し、法案に示された規定が極めてあいまいで、法としての基本ができていないと酷評されました。
なぜ、いま再びスパイ防止法が必要なのか
旧スパイ防止法の廃案からおよそ40年が経過して、国際社会の環境は大きく変化していったのです。
以前であれば軍事力が特に注視されていたのですが、現在では通信技術も発達しており科学技術や生産の分野なども安全保障が必要とされるようになっています。
報道機関も、以前であれば反対する立場にあったのですが、現在ではスパイ防止法の必要性に理解を示すメディアも増えてきたのです。
一方で、40年の間に国家機密を守るための法体制は徐々に整備されており、以下のような法律が制定されています。
・特定秘密保護法(2013年)
・サイバーセキュリティー基本法(2015年)
・共謀罪(2017年)
・経済安保法(2022年)
・能動的サイバー防御法(2025年)
などの法律が制定されたのですが、それでもスパイ行為そのものを取り締まる法律がないというのが現在の推進派の主張です。
ただし、既存の法律で取り締まることができないものは具体的に何かという詳細については、明らかではありません。
立憲民主党などの野党は反発を強めていて、同党の本庄知史・政務調査会長はスパイ防止法の摘発対象には日本人も含まれる恐れがあると指摘しているのです。
参政党の神谷宗幣代表は、極端な思想の公務員は辞めてもらう必要があり、洗い出すのがスパイ防止法だと発言しています。
発言を受けて、かえってスパイ防止法は思想弾圧の道具になりかねないと懸念する声が広がっているのです。
法律は一度できたら簡単には廃止できるものではなく、高市内閣が進めようとする法案の具体的内容は明らかになっていないものの法律は解釈次第でがらりと内容が変わります。
拡大解釈の余地はどこにあるのか、想定される解釈は何かなどをよく考慮して、踏まえたうえでの慎重な議論が必要となるでしょう。
最後に
スパイ防止法は高市総理の自民党総裁選における公約にも掲げられており、日本維新の会との連立合意書でも成立に向けて検討することが明記されていました。
スパイ防止法は外国に対して機密性の高い情報を渡した場合に罰則を与えるという法律で、野党でも賛同者が多いのですが、1985年にも一度案が出されて反対されたのです。
しかし、拡大解釈に対する懸念や思想弾圧の道具になるのではないかという不安もあります。
要約
高市内閣発足に伴い、かつて廃案となった「スパイ防止法」制定の動きが再燃している。維新や国民民主なども賛同しており、衆参両院で過半数の支持がある状況だ。 同法は1985年にも提出されたが、定義の曖昧さから通常の言論活動まで処罰対象になりかねないとして猛反発を受け廃案となった経緯がある。現在、経済安保等の観点から推進派は不可欠とするが、既存法で十分との指摘や、拡大解釈による思想弾圧・人権侵害への懸念も根強い。一度制定されれば容易に廃止できないため、法案の中身に対する極めて慎重な議論が求められている。

※上記は、一つの例になります。幼稚園や保育園のような事業所もあれば、お昼頃まで支援しているところや朝から夕方まで預かっているところなどそれぞれです。また、事業所によっては送迎をしているところもあります。