消費税がさらに引き上げられるのではないかという話が出ている昨今は、物価高騰に伴って消費税が家計に重い負担となっているでしょう。
消費税増税に関連して話題となっているのが輸出戻し税という聞きなじみがない税金ですが、どのようなものなのでしょうか?
輸出戻し税について、解説します。
輸出戻し税とは?
消費税は日常的に支払っている最も身近ともいえる税金ですが、一方でほとんどの人になじみがないような税金もあるのです。
輸出戻し税は名前から輸出入に関わる税金だということは察しがつくと思いますが、消費税とどのような関係があるのか解説します。
消費税や付加価値税などの税制を導入している国は日本以外にもあるのですが、国際的なルールとして消費税は輸出品に課税できないと定められているのです。
実際に消費者となるのは海外の人々なので、日本の消費税を課すことができないため、輸出品には課税できません。
輸出品には消費税がかかりませんが、輸出業者が仕入れで支払う料金には消費税も含まれているため、消費税の分が損失になっているのです。
税務署は、輸出業者が仕入れで支払っている消費税に関しては輸出業者に還付するようになっていて、還付する仕組みのことを輸出戻し税といいます。
輸出戻し税を受けることができるのは大企業だけだと思われることもありますが、実は輸出を行う業者は全て受けることができるのです。
消費税は、消費者が負担するものであるということが消費税法において決まっているのですが、実際には事業者が納税しています。
生産や流通、販売といった段階があるのですが、各事業者はそれぞれ消費税を納付する必要があるのです。
しかし、税額に相当する部分を仕入れ税額控除として確保することができるため、販売時の消費税から仕入れの消費税を差し引いて納税できます。
例えば、製造業者が5万円で出荷したものが10万円で販売されている場合の消費税はどうなるのでしょうか?
原材料製造業者が2万円の原材料に消費税を加えて2万2千円で販売していた場合、原材料製造業者は2千円を消費税として納税することになります。
メーカーは原材料を加工して卸売業者に5万円で出荷する際、消費税5千円を加算して2万5千で売るため、メーカーは仕入れ時の2千円を引いた3千円を納めるのです。
卸売業者が7万円で製品を小売業者に売る場合は、7千円を加算して売ることとなり、卸売業者は7千円から5千円を差し引いて2千円納税します。
小売業者が商品を10万円で販売する場合は消費税1万円を加算するため、小売業者は3千円を消費税として納税することとなるのです。
消費者が負担する1万円の消費税は、各段階で発生した消費税を合計したものとなります。
国税庁では、最終的に消費者が負担することになるため、事業者が消費税を負担することにはならないと述べているのです。
輸出した商品に関しては、海外の消費者からは消費税をもらわないと定められているため、事業者は10万円しか受け取ることができません。
しかし、仕入れの段階ですでに他の事業者には消費税を支払っているため、損をしてしまうのです。
他の事業者に消費税を支払って最終的に取れなくなるケースでは、輸出戻し税によって支払った税金を還付してもらうこととなります。
公正な消費税の負担について
消費税の仕組みについて知っていればわかりますが、取引が国内で完結する場合は事業者が消費税を負担することはないのです。
しかし、輸出に関しては輸出品に消費税が課税されないという国際的なルールがあるため、消費税は事業者が負担することになります。
消費税は事業者が負担しないことを前提としているため、事業者が負担することになってしまった場合は輸出戻し税という名目で還付するのです。
しかし、輸出大企業の取引の実態には、中小企業や下請けに対して納品する際、消費税分値下げするよう要求することもあります。
さらに、払わなかった消費税分も税務署から還付されることになっている事態もあるのです。
ただし、輸出大企業が中小企業としか取引していないということはなく、消費税分を取引先に支払わないとも限りません。
還付金によって企業が不当な利益を得ているケースもありますが、すべて大企業が得をしているというわけではないのです。
しかし、企業の中には消費税の返金分によって利益を得ていることもあり、消費税が増税すれば金額も増えてしまいます。
また、輸出企業だけではなく国内販売を中心としている大企業の場合も、下請けに押し付けることで利益を得ていることがあるでしょう。
大企業が下請けに負担を押し付けているときは、下請けが支払った消費税が輸出戻し金として大企業に支払われていることになります。
正しく解決する方法としては、必要な消費税をちゃんと支払い、下請けの負担を軽減することです。
もし輸出戻し税という制度を廃止することになれば、社会保障の財源にすることも可能となります。
しかし、不公正な取引を放置したままで輸出戻し税を廃止してしまった場合は、大企業はさらなる値下げを強要する可能性もあるでしょう。
廃止して社会保険の財源にするという案もあるのですが、難しいため消費税の引き上げを阻止して廃止を目指す方が現実味はあります。
一部の大企業が中小企業や下請けに納品の際、消費税分安くすることなど単価を下げることを強要するケースもあるのです。
輸出戻し税は、本来支払う必要のない消費税を支払うことになったため、還付するために設けられています。
しかし、大企業の不正な取引のせいで下請けなどが消費税を負担することになってしまう事態が続くようであれば、輸出戻し税も廃止になる可能性もあるでしょう。
まとめ
消費税に関連して輸出戻し税というものがあり、輸出品にかかっている消費税について事業者に還付するという制度のことをいいます。
消費税は製造、販売の過程で関わった事業者ごとに発生し、価格に転嫁することで最終的には輸出事業者が全額負担することになる可能性もあるでしょう。
また、大企業の中には消費税の負担を下請けに押し付けてしまい、輸出戻し税だけを自社で受け取っているケースもあります。