児童発達支援管理責任者、通称「児発管」は、人員配置基準により、児童発達支援施設に必ず1名配置される事になっています。
ところで、この児発管とは、普段どのようなお仕事をしているのでしょうか。
今回は、児発管の仕事内容から実務用件まで、一挙にご紹介していきたいと思います。
児発管の仕事内容とは?
児童発達支援管理責任者は、児童福祉法に定められた施設において、児童の発達の課題を把握しながら個別支援計画を策定し、一人ひとりのニーズに合った支援や集団療育の企画・管理を行うお仕事です。
働く事のできる施設は、児童発達支援事業や児童発達支援センターの他にも、放課後デイサービス、保育所等訪問支援、医療型障害児入所施設、福祉型障害児入所施設があります。
主な仕事内容は、支援計画の作成、保護者との相談支援、他の指導員への助言や指導、そして、利用者へのアセスメントやモニタリングがあります。
では、アセスメントやモニタリングとは何なのでしょうか、もう少し深く言及してみましょう。
アセスメントとは
アセスメントとは、利用者に関する情報の収集や分析を行い、自立可能な日常生活を営むために解決すべき課題を把握する事です。
その中には、実に様々な情報があります。
例えば、これまでの生育暦、現在の家庭環境、学校での様子、心理検査、発達検査、医療歴や診断、学校の成績などが挙げられます。
こうした情報の中から、一人ひとりに合った課題を見出していく力をアセスメント力と言い、これはまた、今後の福祉の大きな課題でもあります。
モニタリングとは
モニタリングとは、相談支援の中で支援計画から状況把握を行い、決められたサービスや支援が計画どおり提供されているかどうか、サービス提供者と利用する側双方が確認する事です。
モニタリングの際、サービス提供者は、これまでのサービスの提供状況を踏まえ、課題の達成度や発見といった情報を積極的に述べる事が大切です。
定期的にこのモニタリングをする事になっていますが、子どもの状態や家庭状況等に変化があった場合も、適宜モニタリングを行う事が望ましいとされています。
このように、児発管は、様々な知識や経験を問われる他にも、利用者への対応能力や、施設スタッフに対する管理能力が求められます。
児童発達支援管理責任者の研修について
サービス管理責任者及び児童発達支援管理責任者研修の見直しされました。
1.研修が、基礎研修、実践研修、更新研修に分けられました。
2.研修のカリキュラムを統一し、共通で実施することになりました。
従来は介護、地域生活(身体、知的・精神)、就労、児童の分野に分けられていましたが、統一されたカリキュラムで実施されますので、「分野」という考え方がなくなりました。
このため、従事する事業所の種別により介護分野や地域生活(身体、知的・精神)分野、就労分野、児童分野(児童発達支援管理責任者)を分けて受講する必要がなくなりました。
尚、平成 30 年度以前の受講者は、統一カリキュラムを受講したものとみなされます。⇒ いずれかの分野を受講していれば、他の分野のサビ管等研修を修了したものとなります。(例:介護分野のみの受講者であっても、地域生活(身体、知的・精神)分野や就労分野の研修、児童分野(児発管)の研修の修了者とみなされます。)
3.直接支援業務による実務経験が8年に短縮されました。
直接支援業務による実務経験が10年から8年に短縮されました。
4.経過処置
・見直し前の研修(平成 18 年度~30 年度)受講済みの方
令和5年度末(2024 年 3 月末)までは、更新研修受講前でも引き続きサービス管理責任者等として業務に従事することができます。
・基礎研修受講時点で実務要件を満たしている方(平成 31 年度~令和3年度までの基礎研修受講者に限る。)
基礎研修の修了時点でサービス管理責任者等としての実務要件を満たしている場合は、実践研修修了前であっても、3年間に限りサービス管理責任者等の要件を満たしているものとみなされます。
5.配置する際の取扱いの緩和
研修の要件を満たすためには、「基礎研修+OJT(2年)+実践研修」の受講が必要になったことから、基礎研修までを修了した方については、次のとおり配置する際の取扱いが緩和されることになりました。
基礎研修を修了した方
・2人目のサービス管理責任者等として配置可能
既にサービス管理責任者等を1名配置している場合は、基礎研修を修了し、実践研修受講前の方を2人目のサービス管理責任者等として配置することができます。
・計画原案の作成が可能
基礎研修を修了し、実践研修受講前の方であっても、個別支援計画「原案」を作成することができます。
基礎研修受講者の実務要件の緩和
基礎研修から実践研修までの間にOJT2年以上が必要になったことから、基礎研修受講者の実務要件は、サービス管理責任者等として必要な実務経験年数よりも2年短い期間から受講できることになりました。
(例:相談支援業務5年⇒基礎研修は相談支援業務の実務経験3年で受講可能)
6.OJT(2年以上)について
OJT(オージェ―ティー)とは「On the Job Training」のことです。放課後等デイサービスや児童発達支援等の職場で実務をすることで職業教育をする現任研修のことを指します。ここでのOJTとは、基礎研修を修了した日の以後に、相談支援業務または直接支援業務に通算して2年以上従事することを指します。
7.サービス管理責任者等実践研修
基礎研修を終了し、OJTの期間を終了すればサービス管理責任者等実践研修を受講することができます。
サービス管理責任者等実践研修の内容は!
- 障害福祉の動向に関する講義(1時間)
- サービス提供に関する講義及び演習(6.5時間)
- 人材育成の手法に関する講義及び演習(2.5時間)
- 多職種及び地域連携に関する講義及び演習(3.5時間)
実務要件について
では、児発管になるためにはどうすればよいのでしょうか。
実は、平成29年に運営基準の改正があり、ガイドラインによると、支援内容の適正化により専門性が高まっています。
旧実務要件
・相談支援業務における実務経験(5年以上)
・直接支援業務における実務経験(10年以上)
・有資格者の相談、直接支援業務における実務経験(必要年数は資格により異なる)
という内容でしたが、改正後の新実務要件は、
・実務要件と保育所等の児童福祉経験(3年以上)
となっています。
つまり、児発管の資格をとるためには、障害者・児、児童への3年以上の支援経験が必須になるという事です。
ですが、非常に複雑ですね!
また、2019年4月から資格要件や研修形式などが変更となりました。
- 5年以上の相談支援業務における実務経験
- 8年以上の直接支援業務における実務経験
- 国家資格と実務経験を満たしていること
通算5年以上の相談支援業務の経験がある場合
以下の施設等にて、通算5年以上の相談支援業務に従事している必要があります。
※ 1年以上の実務経験とは、業務に従事した期間が1年以上であり、かつ、実際に業務に従事した日数が1年あたり180日以上であることをいう。
例)5年以上の実務経験=従事した期間が5年間、かつ、実際に従事した日数が900日以上
ア:相談支援事業に従事する者
- 地域生活支援事業
- 障害児相談支援事業
- 身体障害者相談支援事業
- 知的障害者相談支援事業
イ:相談機関等において相談支援業務に従事する者
- 児童相談所
- 児童家庭支援センター
- 身体障害者更生相談所
- 精神障害者社会復帰施設
- 知的障害者更生相談所
- 福祉事務所
- 発達障害者支援センター
ウ:施設等において相談支援業務に従事する者
- 障害児入所施設
- 乳児院
- 児童養護施設
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 障害者支援施設
- 精神保健福祉センター
- 老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 地域包括支援センター
- 救護施設
- 更生施設
〇老人福祉施設 救護施設 更生施設 介護老人保健施設 地域包括支援センター その他準ずる施設の従業者、準ずる
者が、相談支援業務等に従事した期間も実務経験年数に含めることはできますが、これらの業務以外に児童または障害者に対する支援業務に従事した期間が通算3年以上なければなりません。
エ:就労支援に関する相談支援の業務に従事する者
- 障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
オ:学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)において相談支援の業務に従事する者
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 高等専門学校
カ:医療機関において相談支援業務に従事するもので、次のいずれかに該当する者
- 病院
- 診療所
ただし、社会福祉主事、相談支援専門員等、保育士、児童指導員、障害者社会復帰指導員であって、上記ア~オの実務経験 年数が1年以上のもの
通算8年以上の直接支援業務の経験がある場合
以下の施設等にて、通算8年以上の直接支援業務に従事している必要があります。
※ 1年以上の実務経験とは、業務に従事した期間が1年以上であり、かつ、実際に業務に従事した日数が1年あたり180日以上であることをいう。
例)5年以上の実務経験=従事した期間が5年間、かつ、実際に従事した日数が1440日以上
ア:施設等において介護業務に従事する者
- 障害児入所施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 保育所
- 幼保連携型認定こども園
- 児童厚生施設
- 児童家庭支援センター
- 児童養護施設
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 障害者支援施設
- 老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 病院又は診療所の療養病床関係病室
イ:事業所等において介護業務に従事するもの
- 障害児通所支援事業
- 児童自立生活援助事業
- 放課後児童健全育成事業
- 子育て短期支援事業
- 乳児家庭全戸訪問事業
- 養育支援訪問事業
- 地域子育て支援拠点事業
- 一時預かり事業
- 小規模住居型児童養育事業
- 家庭的保育事業
- 小規模保育事業
- 居宅訪問型保育事業
- 事業所内保育事業
- 病児保育事業
- 子育て援助活動支援事業
- 障害福祉サービス事業
- 老人居宅介護等事業
ウ:医療機関等において介護業務に従事する者
- 保険医療機関
- 保険薬局
- 訪問看護事業所
障害者雇用事業所において就業支援の業務に従事するもの
- 特例子会社
- 助成金受給事業所
学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 高等専門学校
〇老人福祉施設、介護老人保健施設、療養病床関係病室、老人居宅介護等事業などの高齢者分野での直接支援業務に従事してきた場合、または特例子会社、助成金受給事業所で障害者の就労支援に従事してきた場合には実務経験年数に含めることはできますが、これらの業務以外に児童または障害者に対する支援業務に従事した期間が通算3年以上なければなりません。
有資格者と実務経験がある場合
ア:次のいずれかに該当する者
直接支援業務の経験が通算5年以上が必要です。
- 社会福祉主事任用資格
- 相談支援の業務に関する基礎的な研修を修了する等により相談支援の業務を行うために必要な知識及び技術を習得したものと認められるもの
- 保育士又は国家戦略特別区域限定保育士
- 児童指導員任用資格者
- 精神障害者社会復帰指導員任用資格者
イ:国家資格等による業務に5年以上従事している者
国家資格等とは、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護
福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養
士、栄養士、精神保健福祉士のことをいう。
児童発達支援管理責任者への道
例えば、保育士の資格をもっていて、放課後等デイサービスや児童発達支援の施設での経験が通算5年以上の場合ですと要件を満たしています。
そして、児童発達支援管理責任者の研修を受けることにより、児童発達支援管理責任者になります。
※児童発達支援管理責任者の研修が、多くの都道府県で枠が少なく受けれないことも。。。
研修の申し込み
ご自身が勤務されている施設、事業所や教室が所在する都道府県で研修を受けることになっております。
都道府県または都道府県から指定を受けた事業者が行っている場合とあります。
どちらも、都道府県のホームページから研修の日程や場所、申し込みの方法など掲載されております。
研修を実施する頻度は年に1~2回と少なく、予め確認や準備が必要になります。
そして、研修の申し込みを行う時点で実務経験の要件をみたしていることが前提になりますが、実務経験満たしていない場合にも、指定年数を満たすことを見越して研修を受けられる場合があります。
まとめ
今回は、児発管の仕事内容から実務用件までを、一挙にご紹介していきました。
児発管とは、座学だけでなく、資格習得後に実務経験を積む必要があるという事がわかりましたね。
大成するまでに数年かかりますが、大きな社会貢献にもなる尊いお仕事ですから、今後の子供たちのためにも、その門をたたいてみませんか?
参考
https://www.rakuraku.or.jp/shienhi/liblary/FileDir/CT55N109.pdf
http://www.hwc.or.jp/kensyuu/data/wp-content/uploads/2019/05/02%E3%80%80%E3%82%B5%E3%83%93%E7%AE%A1%E7%AD%89%E3%80%80%E7%A0%94%E4%BF%AE%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E5%8F%8A%E3%81%B3Q%EF%BC%86A%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf