世代によっては、アスペルガー症候群よりも自閉症の方が聞き馴染みがある、という人もいますよね。
現在では、アスペルガー症候群も自閉症も「自閉症スペクトラム」の名のもとに統合されていますが、そもそも自閉症とはどのような障害なのでしょうか。
今回は、3タイプある発達障害の一つASDの中でも、自閉症について詳しく解説していきたいと思います。





自閉症スペクトラム障害という診断名ができるまで

スペクトラムという言葉は、“連続体”を意味します。
最近になってできた、この自閉症スペクトラム障害という診断名には、一体どのような経緯があるのでしょうか。
まずは、その旧跡をたどってみましょう。

2013年を境に、これまでのアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症といった様々な診断名における記述が、自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)という診断名に統合されました。
アメリカ精神医学会『DSM-5』の『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版で発表されたのです。

『DSM-5』を発表する前、自閉症やアスペルガー症候群などは、各々の症状に違いがあるとされていました。
以前は診断基準が異なっていたため、“独立した障害”と、考えられていたのです。

ところが、幼少期にアスペルガー症候群と診断された人が、年齢や環境の変化によって自閉症と診断されるケースや、3歳以降になってから自閉症の症状が明確にあらわれたケースなど、イレギュラーな事例が続いていました。

医療の現場では、脳画像の研究において差異が認められない事もありましたし、程度によっては生活に支障をきたす人と、そうでない人がいるという事も分かったのです。
このように、研究を進める過程で新たな発見があった事、さらには、その支援方法も共通している事が多いため、現在では、障害と障害の間に明確な境界線を設けていません。

連続体を意味するスペクトラムという言葉が採用されたのには、上記のような経緯があったのです。

自閉症の症状と知的レベル

自閉症の主な特性は「言語発達の遅れ」「対人関係や社会性における困難」「こだわりと偏り」の3つです。

自閉症の子供は、相手の気持ちを理解するのがあまり得意でなく、また、言語発達も遅い事から、どうしても周囲とうまくコミュニケーションをとっていくのが難しいです。
それから、興味が特定の対象に限定されやすく、臨機応変な対応も苦手です。
無理にペースを変えようとすると、パニックを起こしてしまう場合もあるでしょう。

さて、自閉症というのはその重症度を分類する上で、知的レベルが重要な指標となります。
自閉症の約70~80%は知的レベルが低下していると判断されうる「IQ70以下」です。

知的機能は必ずしも全般的に低下しているのではなく、検査の項目では高得点をマークする事もあります。
自閉症の一形態として呼ばれる「サヴァン症候群」は、記憶や計算といった分野で、一般の人にはない特殊な能力を発揮します。
いわば天才です。

自閉症の場合、特に言語理解に関するものが苦手ですが、積み木やパズルといった視覚的空間認知に関しては比較的得意です。
そのへんをうまくのばしながら、成長を見守りたいものです。

まとめ

今回はASDの中でも、自閉症について解説しました。
今は、自閉症スペクトラム障害という診断名に統合されていますが、もともとは自閉症やアスペルガー症候群など、様々な発達障害が個々のカテゴリーとして存在していたのです。

自閉症自体のルーツをたどれば、言葉の遅れや社会性における困難などが挙げられますが、現在では、年齢や環境により変化する場合もあるため、障害と障害の境界線を設けていません。
そのため、より一層一、人ひとりの様子をきちんと観察する必要があるでしょう。