例えば、皆さんにとって当たり前の「文字を書く」という動作が困難な場合、日常生活に大きな支障をきたすでしょう。
2016年に本を出版し、一躍有名になった話題の少年イド・ケダーさんは、自らが重度の自閉症であり、日常生活に必要な動作がうまくできません。
今回はそんな彼の自叙伝から、思うように体が動かない葛藤をお伝えします。

自閉症の人の体が思うように動かない葛藤

一般的に自閉症の人は、反応が鈍く、動作も遅いという特徴があります。
何度も物を落とし、上手くつかめない様子を見ていると「知的障害もあるのだから、仕方がない」と、解釈されてしまいがちです。
しかしながら、深層心理においては、以下のような葛藤があったのです。

「字を書いたりするのに必要な、細かい手の動きがとくにむずかしい。手がまるで野球のミットのようで、指はバナナのようだ。頭ではなにをしたいかがわかっているのに、指がいうことをきいてくれない。」

『自閉症のぼくが「ありがとう」を言えるまで』イド・ケダー著/ 入江真佐子訳/ 飛鳥新社

いかがですか?
上記から、自閉症の人は、想像以上に感触が鈍い事がお分かりいただけたのではないでしょうか。
鈍いというのは、学術的に把握しているといってもそれがどの程度のものなのか、本人でなければ分かりません。
バナナのような指に、野球ミットをはめて文字を書くなど、想像を絶する域ですよね。

リハビリで筋力トレーニングを

自閉症の人は筋力も弱い為、身の周りの事ができず、手伝ってくれる人がいなければ日常生活に支障をきたしてしまいます。
その場合、筋力トレーニングを取り入れていく必要があるでしょう。
気になる方は、専門機関にご相談ください。

理解しておけなければならないのは、命令しても体がいうことを聞かないのであって、そもそもできないし、やろうとも思っていないワケではないという事です。

先ほどもお話しした通り、自閉症の人は感覚が鈍感です。
「物を取る」といった、皆さんにとっては至極当然で考えなくてもできる動作でさえ、位置がうまくつかめない、自分が意図していない物を取る、まったく別方向へ手を伸ばしてしまう等といった困難が生じます。

一見、知能が低く、物の区別もつかない人だと認識されがちですが、本人にしてみると非常に悔しく、辛い事なのです。
結果として、目標物を手に取る事ができなかったとしても、そのプロセスは全く別ルートであるという事を、理解しておきましょう。

まとめ

今回は、イド・ケダーさんの自叙伝から、自閉症の人の体が思うように動かない理由についてお伝えしてきました。
イドさんのように、頭では理解できている場合、周りの人の誤解がかえって本人をもどかしい気持ちにさせている事があります。
また、筋力トレーニングを行う事で、改善が見込める可能性もある為、専門機関でご相談する事をおすすめします。