「PHP問題」とは、WebサイトやWebアプリケーションで使用されているPHPの古いバージョンが、公式サポートの終了後も使われ続けることで生じるセキュリティや運用上の問題です。

PHPは、世界中のWebサイトを支えるサーバーサイドのプログラミング言語であり、WordPressもPHPを基盤として動作しています。そのため、PHPのバージョン管理は、Webサイトを安全かつ安定して運営するうえで重要な課題です。

サポートが終了したPHPを使い続けると、セキュリティ上のリスクが高まるだけでなく、システムの互換性や保守性にも影響が及びます。一方で、安易にバージョンアップすると、Webサイトが正常に動作しなくなる可能性もあります。

この記事では、PHP問題が発生する背景や古いバージョンを使い続けるリスク、WordPressを含むWebサイトで取り組むべき具体的な対策について解説します。

PHP問題とは?発生する背景と放置される理由

PHPは世界中のWebサイトを支えるプログラミング言語

インターネット上のWebサイトやWebアプリケーションの多くは、ユーザーからのリクエストに応じてサーバー側で処理を行い、その結果をブラウザに返す仕組みで動いています。

こうしたサーバーサイドの処理に使われる代表的なプログラミング言語の一つが「PHP」です。

PHPは、Webサイトの表示やお問い合わせフォームの処理、データベースとの連携など、さまざまな用途に利用されています。特に、世界的に普及しているコンテンツ管理システム(CMS)のWordPressがPHPを基盤としていることから、多くのWebサイトで採用されています。

W3Techsの2026年10月26日時点の調査では、サーバーサイドのプログラミング言語が判明しているWebサイトのうち、69.2%でPHPが使用されています。また、PHPを使用するWebサイトの26.7%はPHP 7系で動作しています。

この調査結果からも、PHPがWebの基盤を支える重要な技術である一方、古いバージョンが現在も広く使われていることが分かります。

PHPのサポート終了(EOL)とは

PHPはオープンソースのプログラミング言語であり、開発チームによって継続的に改良されています。新しいバージョンでは、機能の改善や処理性能の向上に加え、セキュリティ上の脆弱性を修正するアップデートも提供されます。

ただし、PHPの各バージョンにはサポート期間が設けられています。

一般的に、PHPのメジャーバージョンはリリース後2年間のアクティブサポートと、その後2年間のセキュリティサポートを受けます。つまり、通常は合計4年間がサポート期間の目安となります。

セキュリティサポートが終了すると、原則として公式からセキュリティ修正が提供されなくなります。この状態を「EOL(End of Life)」、すなわちサポート終了と呼びます。

サポートが終了したPHPでWebサイトを運営していても、直ちにサイトが停止するわけではありません。しかし、新たな脆弱性が発見されても公式の修正を受けられない可能性があり、長期的な運用にはリスクが伴います。

なお、サポート期間はPHPのバージョンごとに異なります。現在使用しているバージョンがサポート対象かどうかは、PHP公式サイトのリリース情報で確認することが重要です。

参考:PHP公式サイト「Releases」
https://www.php.net/releases/

なぜ古いPHPが使い続けられているのか

PHPのバージョンアップが推奨されていても、すべてのWebサイトが速やかに更新できるわけではありません。その背景には、技術面と費用面の両方の課題があります。

一つ目は、古いシステムとの互換性です。

PHPはバージョンアップに伴い、関数や構文の仕様が変更されたり、一部の機能が廃止されたりすることがあります。そのため、古いPHPを前提として開発されたプログラムを新しいバージョンで動かすと、エラーが発生する場合があります。

特にWordPressでは、本体だけでなく、テーマやプラグイン、独自に追加したプログラムなどが連携して動作しています。WordPress本体が新しいPHPに対応していても、導入しているテーマやプラグインが対応しているとは限りません。

開発元による更新が停止している場合は、代替プラグインへの移行やプログラムの修正が必要になることもあります。

二つ目は、費用や人材の問題です。

PHPのバージョンアップを安全に進めるには、現在のシステムの調査や互換性の確認、必要なプログラムの修正、動作テストなどが必要です。Webサイトの規模や構成によっては、相応の作業時間と外注費が発生します。

特に、社内に専門知識を持つ担当者がいない中小企業では、日常業務を優先するあまり、バージョンアップが後回しになるケースも考えられます。

さらに、Webサイトが正常に表示されていると、運営者は問題がないと判断しがちです。しかし、見た目に異常がなくても、サポートが終了したPHPを使用している事実は変わりません。

このように、互換性への不安や費用負担、問題の見えにくさが重なり、古いPHPが使われ続けているのです。

古いPHPを使い続ける3つのリスク

1. セキュリティの脆弱性を突いたサイバー攻撃

サポートが終了したPHPを使い続ける最大のリスクは、セキュリティ上の脆弱性が修正されない可能性があることです。

ソフトウェアに脆弱性が存在すると、攻撃者がその弱点を悪用し、不正アクセスやデータの窃取などを試みることがあります。サポート終了後に新たな脆弱性が発見されても、公式の修正プログラムが提供されなければ、対策が難しくなる場合があります。

具体的には、次のような被害が考えられます。

・Webサイトの改ざんや不正なページへの誘導
・管理画面やサーバーへの不正アクセス
・データベースに保存された個人情報などの漏洩
・不正なプログラムの設置や、ほかのシステムへの攻撃に悪用されること

ただし、古いPHPを使っているだけで必ず攻撃されるわけではありません。実際の危険性は、脆弱性の有無やサーバーの設定、ほかのソフトウェアの状態などによって異なります。

また、Webサイトの安全性はPHPだけで決まるものではありません。WordPress本体やプラグインの更新、適切なアクセス制限、バックアップなども含めて、総合的に対策する必要があります。

2. Webサイトの表示速度や運用効率への影響

PHPはバージョンアップを通じて、処理性能や機能が改善されてきました。そのため、古いバージョンを使い続けると、新しいバージョンで得られる性能上の改善を活用できない場合があります。

PHPのバージョンが古いことだけで必ず表示速度が低下するわけではありませんが、サイトの構成や処理内容によっては、サーバーの処理効率に差が生じる可能性があります。

Webサイトの表示速度は、ユーザーの利便性に関わる重要な要素です。表示が遅い状態が続けば、訪問者がページを閲覧する前に離脱する可能性があります。

また、表示速度は検索エンジンがページを評価する際の要素の一つでもあります。PHPの更新による性能改善が期待できる場合は、ほかの速度改善施策とあわせて検討する価値があります。

ただし、検索順位はコンテンツの品質や関連性、ユーザー体験など複数の要因によって決まります。PHPを更新するだけで検索順位が上がるわけではない点には注意が必要です。

3. サーバーのサポート終了やシステム停止への対応

PHP問題は、セキュリティだけでなく、サーバー環境の維持にも影響します。

レンタルサーバー会社やクラウドサービスの提供事業者は、セキュリティや保守性を確保するため、古いPHPの提供を終了することがあります。

その際、利用者にはPHPの変更やシステムの見直しが求められる場合があります。

対応を先送りしていると、サービス側の仕様変更や利用条件の変更によって、Webサイトが正常に動作しなくなる可能性があります。PHPの切り替え後にプログラムの互換性が確保できていなければ、画面が表示されなくなったり、お問い合わせフォームなどの機能が動作しなくなったりすることも考えられます。

企業サイトでこうした問題が発生すると、顧客からの問い合わせを受け付けられなくなるなど、業務に支障が出るおそれがあります。

PHPのサポート状況だけでなく、契約しているサーバー会社からのお知らせや、利用中のPHPバージョンの提供終了予定も定期的に確認しておくことが大切です。

PHP問題を解消するための具体的な対策

PHP問題を解消するには、単純に最新バージョンへ切り替えるのではなく、現在の環境を把握し、互換性を確認しながら段階的に更新することが重要です。

ステップ1:現在のPHPバージョンを確認する

最初に、自社のWebサイトがどのPHPバージョンで動作しているかを確認します。

レンタルサーバーを利用している場合は、サーバーの管理画面にPHPのバージョンを確認・変更する機能が用意されていることが一般的です。契約しているサーバー会社のマニュアルを確認するとよいでしょう。

WordPressを使用している場合は、管理画面の「ツール」から「サイトヘルス」を開き、「情報」タブ内のサーバー情報などを確認する方法もあります。管理画面の構成や表示項目は、WordPressのバージョンによって異なる場合があります。

確認できたら、PHP公式サイトでサポート状況を調べます。

サポートが終了している場合は、更新を検討する必要があります。また、現在サポート対象であっても、今後の終了予定を把握し、計画的に移行できるようにしておくことが大切です。

ステップ2:WordPress本体・テーマ・プラグインの対応状況を確認する

PHPのバージョンを確認したら、次にWebサイトを構成するソフトウェアの対応状況を調査します。

WordPressサイトの場合、主に次の項目を確認します。

・WordPress本体のバージョン
・使用しているテーマと子テーマ
・インストール済みのプラグイン
・独自に追加したPHPプログラム
・お問い合わせフォームや決済機能などの重要な機能
・サーバーの設定や必要な拡張機能

特に注意したいのが、長期間更新されていないプラグインや、独自に開発したプログラムです。

新しいPHPに対応していない場合は、最新版への更新や代替機能への移行、プログラムの修正などを検討します。

また、WordPress本体が対応しているPHPバージョンと、利用中のテーマやプラグインが対応しているPHPバージョンは、必ずしも一致しません。サイト全体で問題なく動作する組み合わせを確認する必要があります。

ステップ3:バックアップとテスト環境を用意する

PHPのバージョンアップを行う際は、本番サイトをいきなり変更することは避けましょう。

事前にWebサイトのファイルとデータベースをバックアップし、問題が発生した場合に復旧できる状態を整えます。

そのうえで、本番サイトを複製したテスト環境を用意し、PHPのバージョンを変更して動作を検証します。

テスト環境では、単にトップページが表示されるかどうかだけでなく、次のような項目も確認します。

・各ページの表示やレイアウト
・WordPress管理画面へのログインと操作
・お問い合わせフォームの送信とメールの受信
・検索機能や会員機能などの動作
・予約や決済などの重要な処理
・エラーログに記録される警告やエラー

テスト中に問題が見つかった場合は、原因を調査して修正します。必要に応じて、対応していないプラグインの変更や、プログラムコードの修正を行います。

なお、バックアップを取得しただけで復旧できるとは限りません。復元手順やバックアップデータの整合性も事前に確認しておくことが重要です。

ステップ4:本番環境を更新し、公開後の動作を確認する

テスト環境で十分な動作確認ができたら、本番環境のPHPを切り替えます。

作業は、アクセスが比較的少ない時間帯を選び、万が一の不具合に対応できる体制を整えたうえで実施します。サイトの規模や機能によっては、事前に利用者へメンテナンスの案内を出すことも検討しましょう。

PHPの切り替え後は、トップページや主要な下層ページだけでなく、お問い合わせフォームや予約機能なども実際に操作して確認します。

エラーログやサーバーの稼働状況も確認し、異常が発生していないかをチェックすることが大切です。

万が一、重大な不具合が発生した場合に備え、事前に決めた復旧手順に沿って対応できるようにしておきましょう。

PHPの更新は、一度実施すれば終わりというものではありません。今後も新しいバージョンのサポート期限を確認し、継続的に管理することが求められます。

PHPのバージョンアップは専門業者に相談すべき?

WebサイトのPHPを更新する際、サーバーの管理画面からバージョンを変更できる場合もあります。しかし、変更操作が簡単だからといって、必ずしも安全に更新できるとは限りません。

特に、長期間更新していないWebサイトや、独自のプログラムを多数組み込んでいるサイトでは、互換性の確認や不具合の修正に専門的な知識が必要になることがあります。

次のような場合は、Web制作会社やシステム保守を担当する専門業者への相談を検討するとよいでしょう。

・現在のPHPバージョンやサーバー環境が分からない
・PHPを更新するとサイトが表示されなくなるのではないかと不安
・古いテーマやプラグインを使用している
・お問い合わせフォームや決済機能など、停止すると業務に影響する機能がある
・自社でバックアップやテスト環境を用意できない

専門業者に相談する場合は、単にPHPを更新するだけでなく、事前調査、互換性の確認、テスト、バックアップ、公開後の動作確認まで対応してもらえるかを確認することが重要です。

また、PHPの更新にあわせて、WordPress本体やテーマ、プラグインの保守体制も見直すと、将来的なトラブルを防ぎやすくなります。

最後に、PHP問題を放置せず、計画的な対策を

PHP問題の本質は、サポートが終了した古いバージョンを使い続けることによって、セキュリティやシステム運用上のリスクが高まることにあります。

古いPHPを使用していても、Webサイトがすぐに停止するとは限りません。しかし、脆弱性への対応が難しくなったり、サーバー環境の変更に対応できなくなったりする可能性があります。

一方で、互換性を確認せずにPHPを更新すると、Webサイトの表示や各種機能に不具合が発生するおそれもあります。

そのため、まずは現在のPHPバージョンとサポート状況を確認し、WordPress本体やテーマ、プラグインとの互換性を調査することが重要です。そのうえで、バックアップとテスト環境を用意し、計画的に更新を進めましょう。

Webサイトは、企業の情報発信や集客、顧客との連絡を支える重要な資産です。安全で安定した運用を続けるためにも、PHPのバージョン管理を一時的な作業ではなく、継続的な保守業務として位置づけることが求められます。